瀬野貴文は勝也の親戚だったんだ。だから、よく考えたらあの場所で事件があったって可笑しく無い。
前は寝起きでニュースを見ただけだったから、しっかりと内容を覚えてなかったんだ。
じゃあ、……もしかして勝也は瀬野貴文に殺された?明も?私も?
……いや、それは無いか。
瀬野貴文は今朝逮捕されてるし、勝也は遅れるってラインしてきたわけだし。
ラインが来たのは亮介と会ってすぐの時だったと思う。その時までは勝也は生きてたって事だ。
でも、……ラインなんて誰でも送れるんじゃ……。
それじゃあ勝也は、今生きてるの?
明は中学校で卓と話をしていたのを見たんだから、まだ生きてる。
でも、勝也は……。
ひなは今日、勝也に会っていないのだ。
一気に押し寄せてきた不安。
ひなは慌てて手に持っていた新聞を片付けると、図書館の外へと走り出す。
その間に、手は鞄の中からスマホを取り出している。
そして図書館の外に出ると、急いで勝也へと電話を掛けた。
プルルルーー
そう鳴って耳に響くコール音と共に、緊張からバクバクと心臓が大きな音をたてている。
カチャッ。
電話を取った!
「もしもし!勝也!」
『なっ、……どうしたよひな?ひなが電話してくるなんて珍しいじゃん。亮介と喧嘩でもした?』
勝也の声がする。
勝也が、……生きてる。
「う、ううん。してない。……勝也は元気?」
『いや、元気だけど』
「そ、そっか」
勝也がまだ生きている。それが分かっただけでひなには充分だ。


