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図書館に入ると真っ直ぐに新聞の置かれている場所へと向かうひな。
図書館に生徒手帳をかざして難なく入る事が出来たのはついさっき。
ひなが見えている。
ひなが存在している世界。
それをひなは実感させられた。
手近にあった1つの新聞を取ると、近くに置かれているソファーへと腰を下ろす。
周りにひなが見えているからこそ、その場に立って新聞を読むという事が出来ないのだ。
ひなが真っ先に確認したのはその日の日付。そして、年号だ。
「やっぱり……元に戻ってる」
新聞に書かれていた日付は5月14日。そしてひなの知ってる年号。
ここは3年後の世界じゃない。
繰り返される今日が、自分が3年後の世界に行っていたという証なのだろう。
新聞を片付けようと思った時、チラッとその新聞の一面がひなの視界に入った。
「これ……」
ニュースで見た内容がデカデカと載せられているその一面に目が離せない。
『数時間で知り合いを次々と刺し殺した瀬野貴文(25)が逮捕された。猟奇殺人か!?』
瀬野貴文は人殺し。
なのに、3年後には普通に生活しているのだ。
新聞に載せられている写真は瀬野貴文の顔と犯行現場だと思われる家。
「この家って……」
思わずひなの口からその言葉が漏れた。
ひなが高校生の頃から買い手が付かず廃屋になっているこの家。
ひな達が通っていた中学校の近くにあったこの家。
この事件はひなの地元で起こっていたのだ。
ひなの新聞を握る手が小刻みに震えた。


