ひなの目に入ったのはルーズリーフの上に渦を巻く様に落ちていた一本の髪の毛。


長くて真っ黒なその髪の毛。


ひなは震える手でルーズリーフを取ると乗っていた髪の毛をパンッと下へと払い落とした。


ひなの突然の行動に、


「どうしたの!?」


と真由美が問い掛けるも、ひなにはその声が届いていない。



「夢、……夢じゃ…なかったかも」



うねりの無い黒い髪の毛。


それはひなの髪でも、真由美のものでもない。


まるで、決して夢だと思ってはいけないと言われている様だ。



「大丈夫?」


「う、…うん」



ひきつった笑顔を向けるが、真由美は不思議そうな表情をする。


が、直ぐにふうっと息を吐くと、


「もう、折角仕入れたばかりの怖い話してたのに」


そう唇を尖らせた。



そういえば、聞いてる!と真由美が言ってたっけ……。



「怖い…話?」


「やっぱり聞いてなかったんだ」



ギロッと睨まれると、ひなは苦笑いを漏らして「ご、ごめん」と答えるしかない。



真由美が言っていた怖い話。


聞いた事がある気もする。


が、その内容が全く思い出さない。



「どんな話だったっけ?」



へらっと笑うひなに対して真由美が、もう~。と不満そうにしながらも再び話の内容を口にした。



「殺されたら、犯人を言わなきゃ自分が溶けて消えるって話」


「殺されたら……」