仲良し8人組




『ひなの家族って仲良しだよね』


『うん。私の家族、仲良しなんだ。それが幸せ!』



そんな会話を何回しただろう。


梓はどんな気持ちで聞いてたんだろう。


梓は、……私の事が嫌い……だったのかもしれない。


いや、かもしれないじゃなくて、きっとそう。


梓が虫ずが走るって言ったのは、……私の事だ。


私の事を覚えてなくても、嫌いな奴がいたという気持ちだけが残ってたんだ。



足は動いていても、ひなが考えるのは梓の事ばかり。


自分に残された時間があと少しという事も分かっているのに、気がそっちへ向かない。


手を引っ張ってくれている亮介の顔をひながそっと伺う。


少し焦っている様な表情。


ひなに残された時間を気にしているのだ。


ひなの為に。


自分の事を必死に考えてくれている亮介のそんな表情を見て、ひなの胸がキリッと痛くなる。



自分だけの為じゃなくて、自分の為に頑張ってくれている人の為にも、今は目先の事に集中しなきゃならないんだ。



そう思うと、重い足にグッと力を入れた。






ーーーーー


亮介が歩を進めている道を考えると、どうやら次は卓の家に向かっているらしい。


が、梓の家から卓の家に行く前に行きたい所がある。


梓と亮介の会話を聞いていて少し気になった事だ。



「あのさ、さっきの馬渕さんの家って……」



梓が言っていた近くにある馬渕さんの家。


亮介へ顔を向け、そこまで口にした時、


「それなら、あそこだぜ」


ニカッと笑って亮介が目の前にある和風の2階建ての家を指差した。