きっと梓の言う通り可哀想なものを見る目を向けていたのだろう。



「じゃあね。亮介」


「あっ、待て待て!梓に聞きたい事があって来たんだよ」



ぶっきらぼうにそう言って去っていこうとする梓を慌てて亮介が引き止めた。


去ろうとしたのを止められた梓は不満顔だ。



「私に聞きたい事?亮介が?」


「ああ。あのさ、前に中学校で皆で集まった時って何か変わった事ってあったか?」


「前って、3年前のでしょ。何かって、…別に何も無かったけど。お酒飲んで騒いだだけでしょ」


「だよな」



他の皆に聞いたのと同じ答え。


誰一人として違う事を言わない。


きっとこの世界にいる彼等にとってはその記憶しかないのだ。


まだ聞いていない卓も答えは同じだろう。


これ以上話を聞いても同じだとひなが思ったその時、何かを思い出した様にあっ!と梓が声をあげた。



「もしかして、校舎がなかなか取り壊されないから怖くなっちゃった?少女の呪いってやつ?」


「少女の呪い?何だよそれ?」



キョトンとした表情をする亮介。


その隣でひなも首を傾げる。



少女の呪い?


そんな話は聞いた事がない。


あの校舎で自殺者がいたという話も聞いた事がないのに、本当に校舎が壊すな!と言っているのだろうか。



「知らなかったの!制服を着た真っ黒な長い髪の女の子が夜な夜なあの校舎を歩き回ってるって噂」


「今、……初めて聞いた」


「まあ、あれよ!工事中に何回も事故が起きて、一時中断してるからそんな噂がたっただけだと思うけどね。だって、あの校舎で自殺した人なんて知らないしね」


「だな」