だが、ひな達がいる方へと来ようと身体を向けた瞬間、驚いた様に目を見開いた。



「なっ、亮介!」


「よっ、久しぶり」



ひらっと手を上げた亮介の側へと梓が歩いてくる。


茶髪のショートカットで、所々に編み込みがされているお洒落な髪型。


変わっていない梓に思わずひなも頬が緩む。



「何、帰ってきてたの?」


「まあな」



亮介と梓が話を初めたが、それよりもひなは梓がずっと左腕を擦っているのが気になる。


亮介も梓が左腕を擦っているのが気になったのか、


「それさ……」


と口を開いたが、その瞬間、


「いつもの事。亮介知ってるでしょ」


強い口調で梓が亮介の言葉を遮った。



いつもの事。


そう梓は言うがひなにはそのいつもの事が分からない。


なのに、


「ああ。悪い」


申し訳なさそうに視線を下へと向ける亮介は知っているらしい返事。



梓の事なら何でも知っていると思ってた。


でもそれは、……ただの思い違いだったのかも。


昨日から自分の知らない皆に気付いてばかり。



そう肩を落とすひな。


その時、チッという舌打ちと共に梓が亮介をキッと睨んだ。



「その可哀想なものを見る目で私を見るの止めてくれる。凄いムカつくから」


「…………」



梓の言葉に目を伏せるだけで亮介は何も言わない。