「亮介、おはよ」
その前で座り、仕事の書類だろう紙に目を通していた亮介がひなの声に顔を上げた。
「おっ、はよー。今日は悪い夢は見なかったのか?」
その質問に無言でひなが首を横に振る。
「えっ?でも……」
「見たよ。しかも、夢じゃなくて、本当にあった事だと思う」
亮介の言葉に被せて伝える真実。
「でも事件は…」
「詳しくは分からないけど、事件の記憶は消されるの。この世界は平和なんかじゃない」
そう言いながらひながテーブルを挟んだ亮介の前へと座った。
当然ながら、記憶を消される…なんて言い出したひなに亮介も困惑顔だ。
「どういう事だよ?」
「私もよくは分からないの」
「何だそりゃ?」
答えを貰えなかった事に、亮介が不思議そうに首を傾げた。
ひなだって分かってない。
ただ、隆の書いたノートにそう書かれていた。
ひなが会った隆は、名前こそ偽りだったが、他の事は嘘を吐かれている気がしない。
信じて良い人。
伏見隆はそういう人だ。
「色々と分からない事だらけ。……ただね。あの見ていた夢の目の前で倒れてた、……ううん。死んでた人は亮介が忘れてしまってる中津明だったよ」
「えっ!マジかよっ!?」
「うん。間違いないよ」
間違いないと言い切れる。
イメチェンをした明を見ていたんだ。仲良し8人組で集まった日に。