「中学の頃からたまーに、俺の事睨んできてた。ひなには言った事無かったけどな」
「そ、…だったんだ」
知らなかった。
太一は中学の頃から亮介への不満が溜まってた…ってこと?
全然そんな雰囲気無かったのに。
亮介も太一も仲が良さそうだったし、太一だって凄く優しかった。
中学の時に、『これ、ひなみたいだからやるよ!』そう言って手渡されたたんぽぽの花。
その時に、
『俺の将来の夢は実家を継ぐ事なんだぜ!』
そう教えてくれた。
嬉しそうに話してくれて、格好いいだろ!って歯を見せて笑っていたのに。
中学の時に私が見た太一は嘘じゃなかった…って思いたい。
のに、信じられなくなってきている自分が怖い。
私達は仲良し8人組だった筈なのに……。
自然とひなの視線は地面へと向かっていて、歩く度に茶色のローヒールの靴先が目に映る。
その時、隣を歩いていた亮介の足が止まった。
ひなも足を止めて顔を上げ、どうかした?という意味を込めて亮介の顔を見れば、
「あっ、わりぃ。ちょっと電話」
とズボンのポケットから取り出したスマホを耳へと当てる。
どうやら、電話が鳴っていたらしい。
バイブに設定されていたからひなは気付かなかった訳だが、謝ってから今亮介が電話を取るというのは間違いなく大切な電話だ。
それをひなも分かったからこそ「うん」と返事をする。
「もしもし」
静かな住宅街に亮介の声だけが響く。


