じゃあ、私や勝也、明の記憶が全ての人から消されたっていうのが正解ってこと…だよね。
どうやって全ての人から消したんだろ?
どうやって記憶を消すの?
「でもさ、亮介の顔見てると昔っから苛々するのは本気だぜ」
「苛々させて悪かったな」
「いーや。今言えてスッキリした」
「……そっか」
ひなの頭を大量の疑問が占めるのと共に、太一から亮介へと文句が続いていた。
しかし、全てを言い切ったらしい太一は亮介を睨み付けていた目を細くさせ、ケラケラと笑い出す。
そして、笑ったまま仕事へと戻っていく。
工具箱からスパナを取り出して笑いながらクルクルと回すその姿にひなも亮介も目を逸らせない。
何故かは分からないが、太一が笑いながらそのスパナをひなや亮介の頭目掛けて投げ下ろす…そんな恐ろしい雰囲気が漂っていたのだ。
しかし、そんな想像はやはり想像でしかなく、太一がひなと亮介の所へと戻ってくる事は無かった。
暫くその場に佇んだ後、亮介の「次、行くか」の言葉でやっと足を動かし始めた二人。
次は梓の家へと向かって歩いているのだが、亮介とひなの間に言葉は無い。
そんな状況を破ったのはひなだ。
「太一って……」
こんなに裏表があったんだね。そう続く言葉をグッと呑み込んだ。
が、亮介にはひなが言おうとしたことが分かったのか、苦笑いを漏らす。
「俺の事が嫌いなんだろうな。何となく気付いてたけどな」
「えっ!?」
気付いてたって事は、……前から?


