昔から龍は亮介を尊敬していたっけ…とひなが思い出に浸った瞬間、
「あっ、そういえばさ。龍って神崎ひなって覚えてる?」
そう亮介が爆弾を投げた。
聞かなきゃならない事とは分かっていても、仲の良かった人が自分の事を知らないと言うのを聞くのは辛い。
龍はひなにとっても大切な弟の様な存在だった相手。
何度か宿題も手伝ってあげた記憶もある。
「神崎ひな?さあ、知らないっすね」
やっぱり。
ドンッとその言葉がひなの胸に落ちてくる。
多分、亮介以外の人は私の事を覚えていない。
そうひなが確信するのは、今までの知り合いの会話で十分だ。
キリッと奥歯を噛み締めると、そっと亮介の服の袖を掴んだ。
「そっか。ありがとな!んじゃ、気を付けて帰れよ!」
そう話を切るのはひなの変化に気付いたから。
ただ、その話を切るタイミングは龍的にも丁度良かったのかもしれない。
「じゃあ」
そう笑って亮介に手を振っていたが、反対の手はお腹を抑えていた。
やはり痛みがあったのだろう。
龍が角を曲がり見えなくなった所で、はぁ…とひなの溜め息が響く。
それにどうした?という感じで首を傾げる亮介。
「龍、大きくなってた。私が知ってるのは、小4だったのに。ランドセル背負ってたのに……」
「今は中1だな」
3年という時間が凄く長い時間に感じられる。
背が高くなったとかだけじゃない。
龍に至っては、顔も少し変わってきている。


