落ち込んで泣きそうになったのはついさっき。でも、そんなひなを軽々と引っ張りあげたのはやはり亮介だ。
「その為に今する事は?」
「記憶を思い出すこと!」
ニヤッと片方の口角を上げる亮介にハッキリと思いを口にしたひなは、わざとニイッと歯を見せる。
「よしっ!じゃあ、次行くぞ!」
「うん」
止めていた足を動かし始めたと共に、思いも希望も動き出す。
通り抜けていく風が後押しをしてくれているように流れていく。
今は3年前に戻ることが最優先。
そして戻れたら、……やりたい事が多過ぎる。
太一の家へと向かっていると、さらさらの黒髪に黒の学ランを着た少年が疲れた様に歩いているのが目に入った。
「あれ?あれって龍?」
「あっ、ほんとだ」
龍へと駆け寄って行く亮介の後をひなが追う。
龍は、ひなと亮介の家の近くに住んでおり、いわゆる幼馴染みというものだ。
歳が離れており、ひなも亮介も弟の様に可愛がっていた記憶がある。
「龍!今、帰りか?早くねぇか?」
「亮介君!」
いきなり亮介に声を掛けられた龍は、驚いたらしく目を見開いた。
声変わりはまだしていないらしい高い声が懐かしい。
が、見た目はひなの記憶の龍とはかなり変わっている。
「学校は?」
「あー、腹痛で早退してきたんすよ。亮介君が帰って来るの久しぶりっすね」
「おう。ちょっとな。それより、腹痛なのに呼び止めて悪かったな」
「ハハッ。亮介君の顔、見れたからチャラっすよ」
「可愛い事言うなぁ!」
楽しそうな二人の会話。


