「ん?誰か人が出てきたぞ!」
明かも!明は存在してるのかも!という希望から慌ててひなも明の家へと顔を向ける。
が、玄関から出てきたのは真っ黒の髪を下の方で1つに束ね、銀フレームの眼鏡を掛けた30代位の女性だ。
お洒落に興味が無いのか、服装も上下お揃いの黒のジャージを着ている彼女は、以前あった時よりもはるかに老けて見える。
以前ひなが彼女にあったのは、この過ぎてしまった3年をたすと5年前位だろうか。
「あっ、明のお姉さんの翼さんだ!」
「へぇー、姉さんか。タイミングバッチリじゃねぇか」
「うん。ほんとに」
シシッと少年の様な笑みを見せ、ポンッとひなの頭を軽くと叩くと、亮介が翼へと向かって駆け出した。
「あのー、すみません!」
片手を緩く上げて翼へと声を掛けると、明らかにぶっちょう面ではい。と振り返る翼。
「中津翼さんですよね?」
「そ、…そうですけど。…何か?」
一応足は止めているものの、亮介を上から下までジロジロと見ているその雰囲気は、変質者じゃないかというのを探るものだろう。
なんせ、いきなり知らない男性に声を掛けられた上に、自分の名前を知っているなんて、そんな怪しい人等なかなかいない。
さすがの視線に亮介も苦笑気味だ。
「あの、今、中津明さんって家にいらっしゃいますか?」
翼さんは明の事を知っているんだろうか?
……知ってて欲しい。
ひなの心拍数が速くなる。
だが、「中津…明?」と不思議そうな顔をして首を傾げる翼を見れば、答えは歴然だ。
翼さんは明の事を知らないんだ。


