「ああ、いいけど。……でも、俺知らないぜ」
眉間に皺を寄せた亮介に向かってひなが安心してという意味を込めてニコッと笑う。
「すぐそこなの!私が案内するよ!」
「お、おう」
少しだけ吃った相槌。
ひなは明の記憶があるから、その家に行く事が全く不安にならないが、亮介は明の記憶が無い。
だからこそ、全く記憶に無い相手の家に行く事に不安になる。
「なあ、ひな。俺はその明とかいう奴と仲は良かったのか?」
「良かったと思うけど」
「そっか。じゃあ、明っつー奴の家とかにも遊びに行ってたんだろうな」
少しでも明の情報を得ようとしてのことだが、ひなは首を傾げてしまった。
「うーん。亮介は明の家に入った事はないんじゃないかな」
「ん?何で?」
ひなの返事に亮介が不思議そうな顔をする。
友達だという相手の家には必ず一回は行った事のある亮介だったから、行った事がないという事実に疑問を感じたのだろう。
「明、自分の家に人を入れるの苦手だったから。私も1回しか入った事ないもん」
「そういうことか。てっきり俺は仲良く無かったのかと思った」
「そう思ってる気がした」
「バレバレかよ」
ふふっとひなから笑い声が漏れる。
「だって凄い眉間に皺寄せてたからね」
「あー、なるほどな」
亮介はといえば、抑える様に眉間へと右手を添えて、一人で納得している。
明との記憶で印象的なのは、面と向かって『僕はひなや亮介が羨ましいよ』と言われた事かな…とひなは思い出を掘り起こした。


