「警察だっ!」



銃を構え、そう叫んで古い民家に押し入って行く日下部(クサカベ)。


その後を新人である田村(タムラ)が追う。


つい先程、この民家から通報があったのだ。人がナイフの様なもので滅多刺しにされて殺されていると。


そこまで電話口で話していた男はその後、犯人はまだこの家にいる。そうハッキリと言ったのだ。


それを聞いて直ぐに現場へと向かったのが30代後半の日下部と新人の田村だった。


民家の中に足を踏み入れると、静まり返ったこの家に一際響く男の泣き声。


日下部は銃を下ろし、その泣き声が聞こえてくる部屋へと駆け出した。



「田村!お前は犯人が潜んで居ないか部屋を一つずつ調べろ!」



その指示に「はい!」という返事をして、日下部の後を追わず部屋を確認していく田村。


田村が一つ目の部屋を確認し終わったその時、日下部は男の泣き声が聞こえてきた部屋のドアをバンッ!と大きな音をさせて開けた。


日下部の目の前に現れたのは、床にしゃがみ込んで顔を両手で覆い号泣している男ただ一人。


それ以外に何ら変わった所はない。


兎に角、この男に怪我はないのかと気になって男へと慌てて駆け寄り、


「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」


そう尋ねたのだが、男はただただ泣き続けるのみ。



「警察に通報したのは貴方ですか?犯人は?」



一刻も早く事情を呑み込みたい為に、そう矢継ぎ早に質問をすると、男が顔を覆っていた両手をゆっくりと下ろし、日下部へと顔を向けた。