「ここ俺んちなんだけど」



「どこまでついてくる気なの?」








「だめー??」





「はーっ」



大きなため息を一つ




「いいよ」





最近、だめっていわれることが少なくなった





私に慣れてきたのか、諦めているのか









「こんなにかっこいいのに、どうしてモテないの?」







「余計なお世話」




「それに、男の部屋にホイホイついてくるアンタもアンタだ」








黒野は一人暮らしだった





親は財閥のなんたらかんたらで





親がめんどくさいから、社会を学ぶためとかいって一人暮らししてるらしい






「まぁ、あんたなら人殺して逃げられるんだろうけど」








「別に、私は抱かれるためにここに来たわけじゃ」








「じゃあなんで来たの」







「俺勉強したから邪魔しないで」







「出ていけって言わないんだね」








「あ?」




睨む黒野







「ここ、間違ってるよ、もっと簡単な解き方がある」






「あ゛?」






「これを代入する前にさ…」








「ほら、簡単」






感心したように私を見る





「アンタ何者なわけ」






「んー?」







どうだと言わんばかりに

参考書から見上げると




ちゅ








「…?」








一瞬何が起きたかわかんなくて




目をパチパチしたまんま、固まっていた








それから数秒か数十秒だろうか








「んっ…とか、やっ…とかいいなよ」





至近距離で見つめる黒野






だって


「だって、こんなこと」






「されたことなかったから」










「まじか、わりぃ」







不思議と嫌な感じはしなかった





身体が熱くなって



どきどきした







「ねぇ、もういっかい」






「はっ?」






「もういっかいしてよ」





「なんで、」








なんでかわかんないけど








「ねぇなんで?」








首をかしげて覗き込んできて、いたずらに笑うその綺麗過ぎる顔に






私は、この気持ちの正体がわかった





気づいた時にはもう、黒野の顔がそこにあって






「んっ…」


唇が重なった







「ふっ……んぅ…」








唇を食まれると、甘い嬌声が漏れる





何度も角度を変える深い口づけに、黒野の服をつかむ






くちゅ



ちゅぅ





いやらしい水音が部屋に響く




「んふ…」







そのうち、唇を割って入り込んだ舌に口内を探られる





「あ....」





口の端から唾液が零れる






目を開けると、黒野の瞳と目が合った







どきっ





恥ずかしくてぎゅっと目を瞑る







キスは激しくなる一方








逃げようとする舌に、黒野の舌はめいっぱっい奥まではいってきて








初めての感覚に、しがみつくのでいっぱいいっぱいだった










どれくらい経っただろうか







快感で頭がぼーっとしてきたころ






やっと唇が離れた










「はぁっ…はぁっ…」






乱れた息の私に対して、黒野は余裕そうな表情









「…気持ち良かった?」






耳元で囁かれただけでも感じてしまう








恥ずかしい





キスがこんなに気持ちのいいものだとは知らなかった









「ねぇ、ちゃんと答えて」






「答えようによっちゃもっと気持ちのいいことしてあげるよ?」










そういって耳たぶを舐めはじめる






「あっ///」









「ほら、さっきみたいにおねだりしてごらん?」






そのうち、舌が奥まで入ってこようとする








「ん…」





まるで、ソフトSMだ








「あ....収まり、つかなくなんのは…はぅ....そっちの方だぞっ....」








せめてもの反論で睨むけど




涙目では、普段の威圧感も皆無だろう







「確かに、限界」










ゆっくりと、押し倒される









「涙目、そそる」





くすっと笑う黒野に見とれた











「ずっと気になってたんだ、アンタがときどき悲しい顔するの」








「俺に教えて」










言えないよ






「聞いたら、きっと私のこと」










「嫌いになんかならないよ、それに俺はお前が人殺すところを見てんだ」





「俺の 好き はそんな軽いもんじゃない、なめんな」









こんなに、私を思ってくれる人がいるなんて







こんなに、幸せでいいんだろうか









もし、私が幸せになったら











この、愛しい人は








不幸になってしまうんだろうか





あのときみたいに