「送って行けなくてごめん。」
「ううん、寝てていいよ。」
正樹はエントランスまで見送りに来てくれた。
ボサっとした髪の正樹。
でも顔がいいのか、今ではそれが無造作な一種のスタイリングなのかと思ってしまう。
「ゆっくり休んで…ね。」
私はなかなか気の利いた言葉1つも掛けられないけれど、正樹は優しい。
私、もしかしたら、いつの間にか、正樹に心を開いているような、そんな気がする。
「じゃあね。」
「おう…あ、紗子。」
歩き出そうとする私の腕を正樹は掴んだ。
「何?」
「あ、あのさ…」
正樹は片手で頭をかく。
「俺とのこと、考えてくれないか?」
「え…?」
俺との…こと?
「俺さ、紗子のこと、大切に思ってる。
これからもその気持ちは変わらないし、紗子とこれからも一緒にいたい。」
「えっと…」
「初めて会った時から、ずっと言ってるけど、紗子のこと守りたい。」
私はいつになく真剣な正樹の瞳から、目線をそらすことが出来なかった。
「紗子のこと、好きだから。」
「……。」
これは———
告白?
私はしばらく黙ってしまった。
なんて言えばいいのか分からない。
「あ、いや…別に答えを今すぐに出して欲しいっていうわけじゃないんだ。
ただ、どこか頭の片隅にでも、俺の気持ちを置いておいて欲しい。」
私を見兼ねて、正樹はそう言った。