「ゴホッ…ろくに連絡すら出来なくて、悪かった。」
「ううん。」
「仕事がさ…1週間くらい前に部下がけっこうやばいミスしちまって、それで皆でフォローしなくちゃいけなくなって。5日間くらい、半端なかった…ゴホッゴホッ」
「もういいよ、喋らなくて。」
「いや…。んで、やっと紗子に会いに行けると思ったら、疲れ溜まってたのか、気抜けたのか
、体調崩しちまって…。んでも無理して会社行ってたら、昨日あたりからこのザマ。ゴホッ…本当笑っちまうよな。」
正樹はだるそうに仰向けになる。
枕元にあったマスクに手を伸ばした。
「本当にごめん。」
「なんで謝るのよ。」
「もう紗子に嫌われたかと思った。」
「……。」
「裏切られたとかって思った?」
「え?」
正樹はだるそうながらも、眼鏡の奥の瞳は優しかった。
「裏切らないよ、絶対。
でもそう思わせたよな、悪い。」
「だからもういいってば。」
いつもの正樹じゃないから、なんだか調子が狂う。
「正樹でも…こんな風になるんだね。」
「あ?どういう意味だよ…ゴホッ」
「ふふふ。」
私は少しだけ笑った。
「…あ、笑った。紗子が笑うと嬉しいよ。それが馬鹿にされてる笑顔でも。」
「それはどうも。」
ちょっぴりダサい正樹。
でもなんだか、それはそれでいいのかも。

