私はしばらく正樹の家の前で立っていた。
もしかしたら、もうこの扉の奥に正樹はいるかもしれない。
正樹と1週間以上も顔を合わせていない。
手に汗を握った。
そして私はゆっくりとカメラの付いたインターホンを押す。
ピーンポーン…
鼓動がドクドクと高鳴っているのが分かった。
1秒がまるで1時間に感じるような、長い長い時間のように感じた。
…やっぱり、いないのかな。
日曜日は確か、正樹は休みなはず。
もう出掛けたりしているのだろうか。
もう一度鳴らす。
ピーンポーン…
「……。」
やっぱり正樹は出なかった。
そっか、そうか…。
もう正樹とは会えないのかな。
ううん、もうこれでいいんだ。
これが運命、私が切り開いた未来。
何か胸につかえた思いを持ちながらも、しょうがないと、引き返そうと歩き出そうとした時だった。
「…紗子?」
えっ…
私はバッとインターホンを見る。
「紗子か…!」
インターホンから、どこか力の無い正樹の声が聞こえた。
よかった、正樹いた…
どこか胸を高鳴らせる私に、正樹は一言「帰れ。」と言った。
「えっ…」
今、なんて———?

