「カルボナーラは私にとって大切な思い出なの。」
「……。」
「人生に希望も何もかも無かった私を救ってくれた瞬間だった。カルボナーラを食べて、その時すべてが満たされたような気がした。
馬鹿だなって思うでしょう?でもね、カルボナーラとそのカルボナーラを作ってくれた人に私は救われたから…」
自分でも何を話しているのかと思う。
こんな話、他人にするつもりなんてなかった。
でも、どうして、今 私は…
「いい話。」
森岡正樹はクスッと笑って、私の手を握った。
「紗子、自分の人生に希望持ってみろよ。」
「え…」
「今、紗子は人生楽しんでるか?人を信じているか?」
私は握られていた自分の手が小さく震えているのに気が付いた。
「希望なんて、もう私にはない。人間なんてなおさら信じられないよ。
あなたには分からない。裏切られた人の気持ちなんて。」
「……。」
「もうね、あんな苦しい思いはもうたくさんなの。人となんて関わりたくないの。」
私は一筋の涙をこぼした。
「あなたとだってそう…もう、裏切られたくないの。」
自分でもひどいことを言っているのは分かっていた。
こんなのただの当てつけだと…。
それでも、もうこの際、この人と関わりを経つにはそっちの方がいいんじゃないかって。
それなのに、森岡正樹は「紗子、顔をあげて。」と柔らかく言った。
そこにはやっぱり優しい瞳の彼がいた。

