雨のち晴れ




「あ、紗子先輩~!おはようございます!」

「おはよう。」

ロッカールームに入った途端、やたらと元気な声で話しかけるのは後輩の柿元絵里、同じ大学の1年生。


「もう、紗子先輩っ聞いてくださいよ~彼氏が…」

「いや、私はいいよ。興味ないし。」

「えー何でですか?!先輩と絵里の仲じゃないですか~」


少し前にK・Yという言葉が流行った、この絵里はまさにそのK・Y中のK・Y。

私は今まで出会ってきた人たちの中で、これほどまでに空気の読むことが出来ない子は初めてだった。

鬱陶しくしても分からない、拒絶しても理解をしない、平気で私のテリトリーの中にずかずかと入ってくるのだ。


あまりにも鬱陶しくて、この間軽くキレたときも「絵里は先輩のことが好きなんです!先輩になついてるんです!だから先輩も絵里のこと好きになってください~!」と、話が全く通用しなかった。

だからもはや諦めた。
この子はもうこのまま放っておこう、と。

微妙に従業員のほとんどがこのK・Yガールに手を焼いているのだが、彼女は仕事がものすごく出来るのだ。
まだ入って3ヶ月くらいなのにも関わらず、仕事ののみこみの早さ、手際の良さ、頭の回転スピードなどダントツだった。

スイッチのオンオフが激しいとでも言おうか、だからこそ、余計に扱いが面倒くさい。


「柿元さん、パンの発注あとでよろしくね~」

「はぁーい、お任せ下さい!」

多分、いちいちイラッとするのは、私だけではないだろう。