雨のち晴れ




大学で講義を受けるときは、決まって窓側の席。

特に意味は無いけれど、私は空を見るのが好きだからここを選ぶ。

あまり興味のない講義だけれど、単位のためには仕方がない。
ルーズリーフを出し、先生の話に耳を傾けるが、イマイチ集中できなかった。


今日の私はどうかしている、どうしてこんな昔のことばかり…

全ては梅雨のせいだろうか?

それでも、マスターのコーヒーが無性に飲みたいと思った。


もう2年も経つんだね。

あれからマスターとは一切連絡が取れなかった。
いつしか携帯電話も解約されてしまったみたい。


――また私は裏切られた。

でも、私の父親や、今まで出会ってきた大人とは違う。

マスターと過ごした日々は確かにあったし、マスターがそんな人ではないことも分かっている。

だからもう、裏切るとかそういうことじゃなくて、何も考えることは辞めた。

そして、もう、二度と誰に対しても心を開かないと、誰のことも受け入れないと決めた。


何も変わっていない、ただマスターに出会う前の時間に戻っただけ。

ぽっかりと心に大きく空いた穴を埋めることは容易ではなかったが、勉強と新しいバイトに打ち込み私は毎日を過ごした。



「おはようございます。」

新しいバイトは、コンビニの店員。

大学からも近く、時給も時間帯によっては950円や1000円と良かったため選んだ。