そんな話をマスターにすると、決まっていつも「僕と紗子が少し変わっているのかもね。」と可笑しそうに笑って言う。
「でも、紗子、いいかい?
人それぞれ、価値観は違う。曲がったことではない限り、誰が正解で不正解なんてこの世には無いんだよ。
だから、そもそも変わっているとか変わっていないとか、そんなこと決める方がおかしいのかもね。」
「うん、そうなのかもしれないね。」
やっぱり、私はマスターが好きだ。
そしてこのカフェ・リベルタという世界が好きだ。
私は、たくさんの経験をし、たくさん物事を考え、一回りも二回りも成長して、大学へと進学した。
大学は、地元の国立大学へ進み、またも成績トップで通過をして特待生という学費の免除という特権を得た。
そして市が募集している奨学金の給与枠に応募をし、見事通過することが出来た。
年間30万円、これを私は家賃の足しにして、アパートでの一人暮らしの生活をスタートさせた。
「紗子、笑っちゃうくらいすごいな。」
そう言って、マスターはささやかなパーティを開いてくれた。
「改めて、大学進学おめでとう。」
「マスターのおかげだよ、本当にありがとう。これからもよろしくお願いします。」
いつしか私はもう、ミルクなしでコーヒーを飲めるようになっていた。
マスターが淹れてくれる、美味しいコーヒー。
どこのお店のコーヒーよりも、1番ここが美味しい。
ずっと、ずっと、この時間が続くと思っていた。
マスターとゆったりとしたこの安心な時間を過ごして、私は小さいながらも幸せな時間をすごしていくと―――

