俺はかすかに手が震えた。
「何言ってんすか…」
「今、僕は癌なんだ。」
———えっ?
頭がクラっとした。
店内には伯父さんの好きなアーティストの曲が流れていた。
とても渋くて、でもどこか悲しそうな声。そんな曲が妙に頭の中に入ってくる。
…伯父さん、今なんて言った?
「もうね、僕の身体限界みたいでね。そう、手遅れっていうのかな。
実は、あと2週間ほどでお店も引き払うんだ。」
久々に頭の中が整理がつかなかった。
だって、だって…
「本当なんですか…」
伯父さんは変な冗談を言うような人ではない。
でもこればっかりは、素直にあぁそうですか、なんて頷けるものでもない。
伯父さんの寂しそうな顔が、真実を物語っていた。
「そんな…」
だって、まだ40歳そこらだろ?
癌だなんて、早すぎんだろ。
「だから、紗子のこと、正樹にお願いしたい。
迷惑な話だということも分かってる。けれど、僕からの最後のお願いなんだ。
遠くからでいい。時々でいい。そっと顔を見るだけでいいんた。
あの子が間違った方向に行った時、そっと戻してやってほしい。
紗子のこと、信じていないわけじゃない。けれど、まだ18、19歳の女の子なんだ。」
伯父さんの切なそうな目が俺の心に突き刺さる。
現実なんだ、これ———と。

