俺はその後、地元――実家に戻り仕事を始めた。
ろくに帰っていなかった実家。
帰ったとき、母親が目に涙を溜めて、俺を抱きしめた。
その時、なぜか今までにない母親の温かさを感じた。
今までポッカリと空いていた心の溝が埋まったような気がした。
仕事は順調にいき、入社して早いうちから上司に認めてもらえた。
「森岡~お前センスあるな。」
同僚たちにも敵対視されることなく、うまくやっていくことが出来た。
仕事にもやりがいを感じ、俺はただただ毎日仕事に没頭した。
本当に何もかも忘れるかのように――
時々、両親とフリーターの弟と結婚をして出て行った妹からも心配されるくらいだった。
そんなこと耳にも入れず、時々伯父さんのコーヒーを飲みたいと思いながらも、顔も出さずにがむしゃらに働いた。
今となれば、どうしてここまで必死だったのかは分からない。
もしかしたら、どこか心の中で、人に頼るような、すがるような思いも抱えていたのかもしれない。
会社に入って、認められる分、やっぱりプレッシャーは大きかった。
結果を出さなくては――と。
そんな生活を送り、2年の月日が流れた。
そんなある日、2年目の梅雨前。上司に呼び出された。
「森岡、お前アメリカ行かないか?」
「アメリカですか…?」
それは海外出張だった。
「とりあえず3年。お前は優秀だから向こうでも躍進できるだろう。かなりの出世だぞ?」
にこにこ笑う上司。
もちろん出世を望んでいなかったわけじゃない。
嬉しい反面、3年もアメリカで暮らせるのかという不安も募る。
「生活面はある程度は大丈夫だろう。寮おあるし、日本人がいないわけでもない。どうだ、上ともお前が適任だと思って出ている話なんだが?」

