雨のち晴れ




高校に入学後も、それと言った大きな変化は無かった。

強いて言うなら少し勉強が大変になったくらい。


相変わらず、私は1人で学校生活を淡々と送っていた。

でも、今までの私とは、当たり前だが大きく違う、マスターがいるからだ。


アルバイトは土日と学校終わりの水曜日の週3回。

マスターは、学校が忙しいときや、テストがあるとき、体調が悪いときは遠慮なく休みなさいと言ってくれた。

生活費と言っても、ご飯は平日は寮で出してくれるし、土日はマスターがまかないを作ってくれたから、十分にやっていけた。

この生活を送るためにも、特待生は欠かせないから、勉強だけはやはり手を抜かなかった。



「いらっしゃいませ。」

私のお仕事は、お客さんとの接客やお会計、お店の掃除やコーヒー豆の発注など、キッチンに立つこと以外の全般を好きなようにやらせてくれた。

だんだんと分かってくるお仕事。

それは自分にとっても新しい刺激となった。


「マスター、今日は天気が良いね。」

「そうだね。」


このお店は、ゆったりとした時間が流れている。

ここに来るお客さんも、もちろんマスターも。

私はこのゆっくりとした静かな時間にいつも身を委ねていた。


マスターは40歳の独身、実年齢よりはるかに若く見える。

私は最初、30歳くらいかと思っていたくらいだ。