「早いね、ずっといたの?」

「まぁ…」

正樹はゆっくりと私を離した。

「もう、会えないかと思った。」

「コンビニで会えるじゃない。」

「いや、そうじゃなくてさ。なんていうか…」

正樹は苦笑いをした。

「いきなり色々と告白して、紗子を苦しめてしまった。ごめん。」

また、あの悲しそうな表情。

「そんな顔しないで。そんな正樹、見たくない。」

私はそう言って、行く宛もなく歩き出した。「少し、歩こう?」と言って。

2人でゆっくりと歩く。

何も言わずに。

「綺麗だな。」

「そうだね。」

行き交う人々、今どんな想いなんだろう?

そんなことをふと考えた。

やっぱり今は幸福感で一杯なのかな?

私は…

「マスターは…」

私は足下を見ながら口にした。

「私の人生において、なくてはならない人なの。
だから、正樹がマスターのところでバイトしてたって聞いて、本当にびっくりした。

正樹が私のことをどこまで知ってるのかも分からないけど、私も働いてたってこと知ってたんでしょ?
だったら、もっと早く教えてほしかった。

だって隠さなくたっていいじゃない。」


「そうだよな、ごめん…」

私はそう答える正樹の言葉に横に首を振った。

「私も…あの時は取り乱してごめんなさい。」

正樹に大っ嫌いだなんて、ひどい言葉を投げつけてしまった。