朝日を浴びながら俺はアパートの郵便受けを開いた。


そこには


【全国最大!歌うまグランプリがここ〇〇で開催!!】


という、歌へたな俺には到底縁のない話だが、賞金500万円に目がいった。


デュエット部門と、ソロ部門に別れていたのだが単身で上京してきた俺にカラオケ大会にでないか?などと誘える友達はいない。


「狙うならソロだな。」


ジャイアンもびっくりするような音痴っぷりな俺に優勝は無理であるとわかっていながらも、500万円という大金を目の前に心が揺れ動いた。


「えっと....開催日は....」


「明後日!?!?」


なんと二日しかない。これはもうやめようと諦めかけていた。


すると、隣の佐々木さんの部屋のドアが空いた。


「その大会に優勝したいか?....私は歌の神だ。」


Tシャツに短パン。どうみてもこれからコンビニに行くいい歳した親父が今、俺の目の前で厨二病チック
真顔で言った。


俺は、ラフな格好の親父に少々痛い目つきを送りながらも、話を聞くことにした。


「佐々木さん。カラオケお得意なんですか?」


「得意も何も私は神だ」


「完全に逝っちゃってるよこの人」ボソッと聞こえるか聞こえないかの声で俺は呟いた。


「優勝したいのであれば、私と契約を結ぶのだ」そう言って佐々木さんはA4サイズの紙をどこからともなく出した。