冬休みは予定通り家に帰った。
 もちろんまた友達と集まる。
 駅前通りのファーストフード店に集まって話をする。
「大学の先輩から告白されたの~」
「うそー!?どんな人!?」
「カッコいい人。凄く人気があるの」
「すごーい!」
「それで、返事はしたの!?」
「ん~、迷ってる」
「えー!」
「なんで!?」
 私は一人窓の外を見ていた。窓側の席でよかったと思う。
 三人の友達は盛り上がって私のことなんてすっかり忘れてる。私はポテトもジュースも飲み終わって何もすることがない。
「もう一人の人からも告白されたの」
「すごーい!モテモテ!」
「あんたは昔からモテたからね~」
「で、で、どうするの?」
「まだ考え中。でも、冬休みが終わって戻ったら返事をすることになってるの」
「二股かけたら?」
「えー!」「えー!」
 場違いだと思う。あーあ、なんでここに私がいるんだろう。
「ところで、」
 声をかけられ、私が振り返ると三人の友達が私のことを見ていた。
「しおは彼氏できた?」
 こんなことなら走っていればよかった。絶対。


 その日の夜、私は自分の部屋だったところで、彼から貰った小説の続きを読んでいた。
 内容は、世界戦争中に一人の男の子と、その幼馴染の女の子が機械の体にされて、兵器にされちゃうお話。きっと悲しい話なんだろうけど、私にとっては悲しくもなんとも思わなかった。私は感情がないのかも。たぶん。
 半分ぐらいまで読み終わったとき、私の部屋のドアがノックされた。
「しおー」
 お姉ちゃんの声。
「なにー?」
 私は返事をする。
「そういえば、昼間にあんたに電話があったよ」
 お姉ちゃんはドアを開けて、私の部屋を覗き込む。
「私に?」
「男の人から」
「男の人?」
「誰?」「誰?」
 二人でそう言った。お姉ちゃんはなにそれって顔をして私を見る。
「村上拓也(むらかみたくや)って言ってたけど?」
「村上拓也?」
 そこで私は思い出した。
「あ、」
「誰?彼氏?」
「クラスメイト」
「大学の?」
「高校の」
 それを聞くとお姉ちゃんは、なんだつまんないという顔をして部屋から出て行った。
 私は小説を床に置いて立ち上がり、電話がある一階の廊下に下りた。