図書館は夏休みだというのに人が少なかった。2階の過去の新聞置き場には、誰も人がいなかった。
「さて、10歳の時の新聞を片っ端から読んでいくか。」
「人もいないし、私もお手伝いしてもいいかな?次元の読み終わった新聞を片付けて、違う新しい新聞を持ってくる。」
「助かるよ。でも、人が来そうになったら手を止めてね。浮いてる様に見えるから。」
それから作業を開始した。いつ何が起きたのか把握できていなかったので、1月から片っ端から読んでいった。
「あった!」
ようやく見つけた【梶原次元】の文字。
「なんて書いてあるの?」
「えっと、ちょっと待って。名前しか見てない。まだ文は読んでない。」
やっと見つけた記事に目を通して、最初は喜んでいたが、しばらく読んでいくうちに驚愕へと変わっていった。
【昨日8月29日、母親の梶原美智子さんらから通報があり、小学4年生、10歳の梶原次元君の行方不明が判明した。警察は、調べを進めている模様。】
目を通した後、次の日の新聞、そのまた次の日の新聞を調べ、自分の名前を再び発見した。
【昨日8月31日、行方不明だった梶原次元君の身柄が保護された。次元君は、堺町の裏山で、近くの住民が発見した。警察は次元君に関して更に調べを進めている模様。】
目を通した後、二の腕を掴んでから、自分が初めて震えていることに気がついた。
「次元、大丈夫?」
シルクの声がなかったら、僕はずっと震えていたかもしれない。
もう一度、新聞に載っている自分の名前を確認して、自分の目は間違っていないと確信した。