memory

「私しか助けられなかった。私しか見てなかったし、小さい子1人放っておくのはどうしてもできなかった。この子のことを覚えてあげられるのは、私だけだったから。」
彼女はニッコリと微笑んで僕の頬にゆっくりと触れた。
「大きくなったね。」
彼女は僕の身体を根から取り出して、僕に向けた。僕の体は、目を閉じたまま、本当に眠っているようだった。
「身体を取り出したら、シルクはどうなっちゃうの？」
シルクは悲しそうな顔をした。
「私は、次元を守ることが責任だったから。その責任を終えたら、私は消えちゃうわ。」
予想はなんとなくしていた。僕もシルクも不確かな存在で、不確かな関係だった。どちらかが消えてもおかしくない。どっちも消えてもおかしくない。僕たちは、知り合いでもなければ兄弟でもない、本当に不確かな関係。そんな僕たちが共存できないのは、酷いことではなかった。
だけど、悲しかった。こんな形で出会わなければ、僕たちは永久的に出会うことはなかったんだから。
シルクは僕の気持ちに気づいたようだった。
「ほら、次元。そんな顔はしないで。いつか、何かの形でまた出会えるかもしれないじゃない。」
「かもしれない？」
「訂正。絶対また会えるわよ。お互いがお互いのことを忘れなかったら、絶対にまた会える。」
薄れていく意識の中で、目の前で微笑んでいるシルクにそっと微笑みを返して、僕は眠りに落ちていった。