モニター画面の隅に映る少女を、男は瞬きすらせずに見つめていた。


 ポニーテールをほどいた長い髪に、小花模様のレトロなワンピースを着た少女を……。


 ──似ている。


 男はふと、そう思った。


 遠目から見ると、髪型と洋服のせいで“あの人”に瓜二つだった。



「っ……」


 男が唇の隙間からわずかに吐息を零した瞬間、勢い良く扉が開いた。



「たっだいまー! ねぇ、聞いてよ真~」


「……」


 猫なで声ですり寄ってくる女を無言で睨みつけた。


 しかし、当の本人は静かな怒りを発する彼に気づかずに続ける。



「目玉が落ちてたんだよ! 目玉だよ?気持ち悪くなーい?」


「……だ」


「へっ?」


「気持ち悪いのは、お前の声だ!」


 珍しく声を荒げた彼に、女──中野未来はビクッと肩を揺らした。


 しかし、すぐにヘラヘラと笑い顔に戻る。



「な、何言ってんの? 真……。ちょっとご機嫌斜めな感じ?」


「……」


 ガンッ!!


 しつこく話し続ける未来に、男は無言でテーブルを叩いた。


 そして、椅子から立ち上がると、笑顔を凍りつかせている未来に歩み寄った。



「真……どうしちゃったの?」


「……黙れと言ってるんだ。分からないのか?」


「ぐッ……!」


 男が無表情のまま、未来の細い首を両手で絞める。


 苦しい……息が出来ない。


 でも……


 真に殺されるのなら本望かも。


 中野未来は苦悶の表情から、フッと力を抜いたような表情になった。



「おいおいッ……何やってんだよ!? 大丈夫か、中野ちゃん!」


 扉が開く音がして、海藻のようなパーマの派手な男が慌てて駆け寄ってきた。


 額田哲司。


 ……コイツは、いっつも私たちの邪魔をしようとする。