秘密実験【完全版】




 それから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。


 杏奈は壁に背中を預けて、ぼんやりと床に座っていた。


 扉が開くのは怖いが、開かないのはもっと怖い。


 このまま閉じ込められ続けたら死んでしまう。


 ……そんなの嫌。


 だって、私はまだ十七年しか生きてないんだから。


 これがドラマだったら、正義のヒーローが扉をぶち破って現れるのに。


 とりとめもなく考えていると、扉を開ける音が杏奈を現実の世界へと引き戻した。


 反射的に身を竦めながら顔を上げる。



「……よいせっと!」


 ピエロの男が白い椅子を持って、部屋の中に入って来た。


 なぜ椅子を……?


 嫌な予感に胸がざわつく。



「おい、ここに座れ。 ……反抗したら、これでお仕置きだからな!」


 男はそう言って、黒く角張った物を持ち上げた。


 スイッチを押すと、ビリッと言う音とともに放電した。


 恐らくはスタンガンだろう。



「……何する気?」


 杏奈は警戒しながらも、促されるまま椅子に座る他なかった。


 拒否や抵抗をしても痛い目に遭うだけ。



「心配すんなって! ちょっとな、動画を見てもらうんだよ」


「動画……?」


「言っとくがアダルトじゃねぇぜ。ひひっ」


 男は手際良く、手錠を杏奈の手と椅子にかけ直した。


 そして、手にしていたDVDをセットする。



「うちのリーダーが直々に編集した、素晴らしい映像美に酔いしれろ!!」


 ピエロ男は訝しそうな顔の杏奈に指を突きつけると、奇声を上げながら部屋から遠ざかって行った。