男は肘掛け椅子に足を組んで座り、並んだ二つのモニター画面を眺めていた。


 一つは、手足を拘束され口に猿ぐつわを噛まされた少年を監禁した部屋。


 もう一つは、足首に長めの鎖をつけられたポニーテールの少女の監禁部屋。


 どちらも、男が企てた実験の被験者──いわゆる“実験台”である。


 長い前髪から覗く切れ長の眼で、男は二人を注意深く監視していた。


 時おり手元のノートにペンを走らせている。


 時計の針は夜中の二時を指していた。


 夜行性の彼には、関係のない話だが。



「……あっちィ~! クソ暑いぜ、このピエロちくしょー」


 扉が開いて、ひょろりとしたアロハシャツ姿の男が入ってきた。


 被っていたピエロ面を投げ捨て、モニター画面の前に座る彼に近づく。



「なぁ真(マコト)、別に被らなくていいんじゃねーの!? あいつらに顔を見られたからって、関係ないだろうよ」


 背中越しに話しかけてくる男に、真と呼ばれた彼は振り向かずに口を開く。



「……俺のやり方に意見するのか? 額田(ヌカダ)」


「やっ……いや、そうじゃねえけど! 暑くて呼吸困難になりそうだったからさぁ~」


 額田と呼ばれたピエロ男は唇を尖らせながら、必死に言い訳をする。


 しかし、彼は聞いていないかのように難しい表情でモニター画面を眺めていた。