半分ほど残っているスポーツドリンクを洗面台の扉に隠し、杏奈は毛布の上に座った。
そして、ふと考える。
耕太郎がいなければ、私は今頃……どうなってたんだろう?
生温い水道水はあるにしても、菓子やアイスなんか口にすることはなかった。
栄養失調になっていたかもしれないし、あるいは──。
「っ……!」
目を閉じて、唇を噛みしめる。
そんなこと考えたくもない。
耕太郎はいるんだし、私もこの通り生きてるんだから。
目を閉じたまま別のことを考えた。
一番良いシナリオを……。
耕太郎と共謀して、リーダーを打ち負かす。
二人で“アジト”から脱出し、逃避行を試みる。
……なんてね?
あんないがぐり坊主が相手じゃ、ロマンチックな話もロマンチックにならない。
自分の考えたシナリオに心の中で苦笑しながら、杏奈は全身に纏わりつく倦怠感に深々とため息をついた。
もう、本当に疲れた。
このまま体力が……持つかどうか……。
暗闇の中、杏奈はハッとして目を覚ました。
いつの間にか、眠ってしまったらしい。
照明が落とされているのは、リーダーの仕業だろうか?
“グスッ……ううう……っ”
どこからか、悲しげに啜り泣く声が聞こえる。
杏奈は首を巡らせて、後方の壁に目をやった。
部屋の隅に、こちらに背中を向けてうずくまる人影が青白く浮かび上がっている。
「……誰っ?」
杏奈は恐怖に負けないように声を出した。
また、あの女の幽霊だろうか。
啜り泣きがピタリと止んで、人影がゆっくりと振り向く。
あれは……悠介?
人影の正体に気づき、小さく息を飲む杏奈。
しかし、様子がおかしい。
顔は悠介なのに──
「ヒッ……!!」
首を絞められたような悲鳴を漏らしながら、青白い顔の悠介を驚愕の眼差しで見つめる。
“彼”の身体には大きな穴が開いており、内臓がグチャグチャになって飛び出していた。


