秘密実験【完全版】




 こちらは捕らわれの身、所持品を取り上げられるのは当然と言えば当然だろう。


 そして、新たな疑問が頭に浮かび上がった。



「ねぇ……今、何時?」


「それは教えられねーな」


「は……?」


「日時は教えるなって釘を刺されてるんだよ。残念でしたー! ククッ……」


 ピエロ男はそう言って、くぐもった笑い声を漏らした。


 この部屋には時計もカレンダーもない。


 遊園地に行ったのは八月三日。


 じゃあ、今は……?


 まだ数時間しか経っていないのかもしれないし、すでに丸一日経過しているのかもしれない。


 時間の感覚が分からず、杏奈は内心焦った。



「……にしても、随分と挑発的な格好してますなぁ~。お嬢さん?」


 男の視線がショートパンツから伸びた太ももに注がれるのが分かり、危険を察知して慌てて手で隠す。


 チッと舌打ちをすると、男は膝の辺りが擦り切れたジーンズのポケットに手を突っ込んだ。



「減るもんじゃねーんだから、別にいいだろ? あぁ!? ……怪我したくなかったら、動くんじゃねーぞ」


 バタフライナイフをちらつかせながら、ピエロ男がじりじりと迫ってくる。