“リーダー”と言う言葉に、杏奈は嫌な予感を覚えた。
……って言うことは複数犯?
一人ならまだしも、こんな危なそうな奴が他にもいるなんて。
「それにしても、女子高生か~。若ぇな。今が一番楽しい時期じゃね?」
「……家に帰して!」
ピエロ男の呑気な口調に苛立ちを感じながら、杏奈は低く抑えた声音で言った。
そんなこと言うだけ無駄だと分かっていても言わずにはいられない。
「はい分かりましたぁ……とか言うとでも思ってんのかよ? もっとよく考えてから発言しようぜ、杏奈チャン」
自分の頭を指先で軽く叩きながら笑う男を睨みつけるが、本当は恐怖と不安で一杯だった。
実験って何?
命に関わるようなことなのかな……。
でも、どうして私なの!?
ふと杏奈はあることに気づき、ニヤける男に問いかけた。
「……私のバッグと携帯は?」
遊園地に持って行った、お気に入りの白いバッグと携帯が見当たらない。
大体検討はつくが、やはり訊かずにはいられなかった。
「こちらで丁重にお預かりしておりますので、ご安心をッ!」
ピエロはわざとらしく敬礼ポーズを取り、またしても杏奈を憂鬱な気分にさせた。


