彼は近くのベンチに私を座らせると


器用な手つきで鼻緒を直してくれた。


意外な特技だな。感心していると、彼は私の足元にひざまついたまま、私の足先にそっと



口づけ。



びっくりしすぎて声も出なかった。


ただただ目をぱちぱち、考えたら随分間抜けな顔をしていたに違いないが彼は至極真面目だった。




「吉鷹。




真奈美の代わりでいい。お前がそれで気が済むなら―――


いくらでも代わりになってやる。



だからこっちを向いてくれ」





それが彼の告白だった、と気づくのにまたも私は数秒間理解できなかった。


ただ口づけをされた場所が熱を持ったように熱い―――


ドォン


遠くで花火の音が聞こえてくる。


私はその鼓動のような花火の音を聞き、




代わりなんて求めてない。



心の中で思った。





何故なら悲しみと同時にやってきたのは―――



唯一無二の彼に対する




恋心だったから。










だからどうしていいか分からず、涙が出てきたのだ。




私はいつの間にかこの人のことを目で追っていて、目に入れると嬉しくなって


視界に入らなくなると不安で、



不安で―――








たまらない。