「私は、クライドの右の傷なんて全然怖くないし、不気味だとも思わないよ……?」


 細い腕を伸ばし、右の顔を隠している前髪を上げた。


 そこにあるのは、右目から口まで伸びた古い傷跡だ。

 これは、俺が幼い頃、両親に捨てられ、サメに襲われた時にできたものだ。


 両親が俺を捨てた理由。


 それは、俺の両親はごくごく一般的な人魚だったにもかかわらず、ふたりの間に生まれた俺は二本の足を持つ、人間のような姿だったこと――……。


 そして、魔力を持っていたことだ。

 それゆえ、俺は人魚の世界から追い出され、この闇の中に住んでいる。


 皆は自分たちとは違う容姿をした俺を恐れ、拒絶する。


 そして、この顔の傷……。

 これがまた俺の評判を悪くする。


 だが、フランは俺を怖がらない。



……スル。

 フランの指先が、俺の古傷にそっと触れる。