ここは善も悪もない恐ろしい場所だ。

 可愛らしい容姿をしたフランは、ここの住人にとっては格好の餌食だ。


 美しい人魚を狙う奴も少なくはないはずだ。


「どうして?

どうしてクライドまでそんなふうに言うの?


クライドはすごく綺麗だよ?

そりゃ、クライドは私たちとは違って尻尾の代わりに、人間みたいな二本の足があるけれど、でも少しもおかしくない。

すらっとしていて、すごく綺麗……。



――それに、前ね、人間の船が難破して、『彫刻の石像』が、私たちの住む場所に落ちてきたんだけど、クライドの肌の色は『彫刻の石像』に似ていて綺麗なの。

あと、かかとまである髪も、深海よりも深い藍色で、目だって金色ですごく綺麗。

あ、このあいだ、人間が使う金貨も見つけたんだけど、その色に似てるかも!!」



 フランはそこまで言うと、少し控えめに俺のすぐ目の前までやって来た。