軟派な王子様【完結】

むなしくも明日はやってくる。


「お母さん!!遅れる!!着付けやって!!」

不器用な私は、自分で浴衣を着ることなど出来ず、待ち合わせ時間の迫る時計を見ながら焦っていた。

お母さんは呆れた顔で私に浴衣を着せはじめた。


水色の紫陽花柄の浴衣は去年買ってもらったばかり。
防虫剤の匂いがぷんとして、鼻を刺激する。

私の気持ちはきっと顔に滲み出ていた。
いつにない浮かない表情の私に、お母さんはため息をついた。


「何悩んでんのか知らないけど、後悔するようなことだけはするんじゃないわよ。」


「お母さん…。」


私はコクりと頷いた。


大丈夫だよ…。

私は…


昇くんを選んだ。


私の目に狂いはない。

そう思いながらも、どうして私は今日、昇君に会うのが辛いんだろう。



昇くんとの待ち合わせ時間は8時。

もたつきながらも、時間には間に合った。