今夜、きみの手に触れさせて




「夏期講習のクラスどうなった?」


藤沢くんは、そんなことを聞いた。




「うん、なんとかSクラス」


「そっか、一緒だな」


メガネの奥の目が穏やかに微笑む。




うちの塾は、月曜から土曜まで毎晩授業があるんだけど、

夏休みになるとそれに加えて、日中には夏期講習が始まるんだ。


通常の授業も夏期講習も、数学と英語だけは成績ごとにクラスがわかれていて、

地元のトップ校を狙える圏内の子はSクラス、上位校狙いはA、そのほかはBと振り分けられていた。




夏期講習ではクラスの入れ替えがあるって聞いていたけど、案外同じ顔ぶれだった。


頭脳明晰、さわやかメガネ男子の藤沢くんはもちろんSクラス。


わたしもかろうじてS。律ちゃんは英語がSで数学がAだった。




「もうがんじがらめって感じだよね」


「受験生だもんな」



思わずうんざりとこぼしたけれど、藤沢くんは全然平気そうだ。