だけど律ちゃん曰く、こうでもしないとふたりっきりで過せる時間なんて、まったく持てないらしい。
学校ではふたりとも、基本それぞれの友だちと過ごしているし、
北見くんの部活が終わるのを待って一緒に帰ってたら、とうとう『帰りが遅い』ってお母さんにブチ切れられちゃったみたいだし。
もちろん図書室で勉強してるって、ウソをついてたらしいんだけど、
受験生だから監視の目がハンパないって嘆いていた。
だから、塾から律ちゃんちまでの徒歩15分の道のりが、ふたりのささやかなデートコースなんだって。
それでもかなりうらやましいけどね。
「月島さん」
カチッと、自転車の鍵を開けたとき、横ちょから男子の声がした。
「ん?」
振り向くと、同じ塾生の藤沢くんが立っている。



