今夜、きみの手に触れさせて



夜――。


塾の授業が終わり……




「じゃ、またね、お先~」

「うん、バイバ~イ」



誰よりも素早く教室を飛び出していくのは、律ちゃんだ。




矢代くんちで北見くんを待って一緒に下校しなくなった代わりに、

律ちゃんは最近、塾の帰り道を北見くんに送ってもらっている。


北見くんは塾生ではないので、授業の終わる10時半に、律ちゃんを迎えにやって来るんだ。




いつも、ほら、塾の斜め向かいにある公園の入り口に、北見くんは立っている。


彼に駆け寄る律ちゃんの後ろ姿を確認しつつ、わたしは自転車置き場へと向かった。




ふふ、北見くんって硬派っぽいのに意外とマメなんだよ。



うちの塾はとにかくほぼ毎日あるから、北見くんはああして毎晩、時間通りにやって来るわけ。


きっと律ちゃんに会いたい一心なんだろーなーって想像すると、ちょっと可愛い。