今夜、きみの手に触れさせて



「前にほめてくれたからさー、色チで買っといたんだ」


「え?」


「全然会わないから渡しそびれちゃってた。律ちゃんに渡しとけばよかったね」


なんて普通のことのように言う。




「え、でも……いいの?」


わたしにくれるの……?


ビックリしてたら、翔子ちゃんは笑った。



「安物だよ~」




「あ、あの、ありがとう」


やっとそう言えたときには、翔子ちゃんはもう歩き出している。


その後ろ姿に声をかけたら、振り返って手を振ってくれた。



友だちみたいに……。




髪飾りのことは、あの日話すことがなくて話題にしただけだったのに。


しかもそんな話しか振れない自分にがっかりしてた。


つまんない話しかできない
つまんない子……って。


そう思われてると思ってた。