今夜、きみの手に触れさせて



「青依ちゃん」


休み時間トイレの帰りに、ひとりで廊下を歩いていたら、後ろから声をかけられた。


「あ、翔子ちゃん」


あの日、矢代くんの部屋で会ったヤスくんの彼女。




「学校では全然会わないね~」


なんて笑っている。


「え、うん」


そういえば顔を見るのは、あの日以来だった。




学校で会う彼女は髪が明るくて、スカートが超短くて、ひとりでいてもかなり目立つ。


わたしとのミスマッチな取り合わせに、クラスメイトがチラ見して通る視線を感じた。




「えと、何……かな?」


ちょっと身構えてしまう。




「これ、あげる」


翔子ちゃんは制服のポケットから何か取り出して、わたしの手のひらに落とした。




あ、これ……。




大きな花の髪飾り。


キレイなレモン色のやつだった。