今夜、きみの手に触れさせて



「でも、まぁ、いつでも気が向いたら純太んち遊びに来てやって」


北見くんがそう締めくくって立ちあがった。


「会話が不安なら、オレだって律ちゃんだって翔子だっているんだから、みんなでこんなふうにしゃべってりゃいーの」


ヤスくんはそんなことを言ってくれた。




去っていくふたりを眺めながら、小さなため息をつく。




矢代くんの家にはもう二度と行かない。


場違いなのはわかっている。


今の会話で、彼が別世界の人だってことが身に沁みた。




わたしが経験してないようなことを、矢代くんはすんなりと済ませている。


キスをしたり、ベッドインしたり……


『求める』って、たぶんそういうこと。




「ちょっとイヤかも」


そう言ったのは律ちゃんだった。


「矢代くんって、なんか軽そう……。青依には似合わないよ」




「う……ん」