今夜、きみの手に触れさせて



「思わないよ、そんなこと! しかもわたし、しっかりなんか全然してないし」


わたしが否定すると律ちゃんは言った。


「ううん。青依はガツガツ勉強してるわけじゃないのに、いつも成績良いもん。地に足つけてがんばってるんだなって思ってる」


「それは律ちゃんだって同じでしょ? 勉強なんて、わたし、塾の宿題やってるだけだし」


あわててそう答えると、律ちゃんはちょっとしょんぼりとうつむいた。


「それがね、中間テストすっごい悪かったの……」




中三になって初めての定期テストが先月行われ……、そう言えばそのあと律ちゃん、ヘコんでたっけ。




「北見くんとつきあいだしてから、正直勉強に身が入ってない自覚ありなんだよねー、わたし」


律ちゃんは、ヘヘと笑った。


「これで期末も悪かったら、親にも塾の先生にも絞られちゃうな」


「北見くんのことは? 家の人には言ってないの?」


「ないない! 言ったら怒られるもん!」


と律ちゃんは声をあげた。