今夜、きみの手に触れさせて



「えっと、矢代くんなんだ……。青依に紹介したいって北見くんが言うのは」


と律ちゃんが言った。




「え?」


「矢代純太。同じクラスだよね?」


律ちゃんが出したその名前に驚いて、わたしは聞き返す。


「矢代くんって、学校……来てないよ?」


「だよねー」


と律ちゃんも苦笑した。




いわゆる不登校ってやつだ。


三年生になってから、たぶん一度も学校に来てないと思う。




「なんかね、幼馴染みなんだって。小学校入学以来の親友らしい」


北見くんと矢代くんの話。


「今も仲良くて、毎日学校帰りに、みんなして矢代くんの家でたむろしてるもん。実はわたしも何回か行ったことがあるんだ」


と律ちゃんは打ち明けてくれた。