今夜、きみの手に触れさせて



純太くんのお兄さんが毎日聴いていた曲。


口ずさんだり、心に刻んだり、小さなノイズにさえお兄さんが生きて、感じた、命が息づいている曲。


だからこそ純太くんが、その体温を感じてきた曲。


たとえ同じ曲を入れ直しても、それは元には戻らない。


そんなかけがえのないものを、わたしは消しちゃったんだ……。




するとパフッと、純太くんがわたしの頭に手のひらを乗っけた。



「曲が元に戻っても、兄貴は戻んねーから」



その頭に額を寄せるようにして、純太くんはそうささやいた。




「オレが歌聴いて浸ってたって、兄貴は帰って来ねーから。だから、青依ちゃんはそんなこと、気にしなくていーよ」


純太くん……。




体勢を元に戻して、純太くんは軽く微笑む。


顔は笑っているのに、静かに注がれた視線が淋しそうに見えて、胸が痛かった。


そうだよね。純太くんはもっともっと大きな悲しみを背負っているんだ。


亡くしたのは曲ではなくて、お兄さんなんだから……。