今夜、きみの手に触れさせて



「何? 話って」


そうわたしの顔を仰ぎながら、純太くんは、ゆっくりと階段を下りてゆく。


「あ、うん」


わたしもトントンと鉄製のステップを踏みしめながら、純太くんの後を追った。




4階と3階の間の踊り場で、純太くんが止まる。


それから次の段に足を投げ出すように座ったから、わたしもその横に腰を下ろした。




「ゴメンなさい!」


そのまま深く頭を下げる。


「わたし、大切な歌、消してしまった」


頭を下げたままそう言うと、柔らかな声が降ってきた。




「オレ言わなかったっけ? 気にしなくていーって」


顔をあげると、純太くんは自分の膝に片ひじをついて、わたしのことを眺めている。


「だけど、取り返しがつかない。お兄さんのipodの曲、消えてなくなってしまったんだから……」




「入ってた曲なら、全部覚えてるよ。聴きたくなったら、また入れればいー」


なんて、純太くんはスラッと言ってくれた。


「でもそれはやっぱり、お兄さんが聴いてたのとはちがうもん」